息子夫婦と暮らしていたが、関係が悪くなってしまいほぼ追い出される感じで施設に入っている。
血縁関係が近ければ近いほど、繋がりも深く強くなりますが・・・いったん関係がこじれてしまうと激しく対立してしまうものです。
そのことがきっかけで、遺言書を作ったなどはよくある話です。
しかし、せっかく作った遺言書にも関わらず、その後、時間が経過で気が変わり、その遺言書を取り消したいと悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
遺言書は、取り消すことが可能です。
新しい遺言書を書くことで、以前の遺言書は取り消されたことになるからです。
そうはいっても、遺言書を作ってもらった時も助けを借りたのに、新しい遺言書で取り消せと言われても…
確かに、遺言書で取り消せると言っても、やったことがなければできませんよね。
ましてや、その方法を失敗してしまったら無効になり、以前の遺言書が実行されてしまいます。
そうならない為にも、今回、遺言書の取り消しや内容の変更方法について詳しく解説します。
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遺言書の取り消し方法は、新しい遺言書を作成する
冒頭でもお伝えしましたが、遺言書は新しい遺言書を作ることで、古い遺言書は取り消されたことになります。以下の条文を読んでもらうと分かります。
第1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
引用元:wikibooks
このように、前の遺言書は後の遺言書で取り消した(撤回)ことになるのです。
遺言書を作った方には、自筆で書いた人もいれば公正証書の人もいると思います。
法律上、自筆の遺言(自筆証書遺言)と公正証書の遺言(公正証書遺言)に効力の差異は設けていません。
ですので、取り消しについても特段の規定を設けているわけではないのです。
どういうことか言いますと、公正証書遺言で作成したら、必ず公正証書遺言で取り消しをしなければいけないわけではなく、公正証書遺言を自筆証書遺言で取り消し可能ということです。
自筆証書遺言での取り消し方法を紹介
1人で、取り消しができるようにどんな文言を書けばいいかお伝えします。
ここで紹介する方法は、基本的にご自身で書く自筆証書遺言になります。
前の遺言書 | 取り消し方法 |
自筆証書遺言 | 「以前作った遺言書をすべて破棄する」または「○○○○年○月○日付で作成した自筆証書遺言を全部撤回する。」 |
公正証書遺言 | ○○○○年○月○日○○法務局所属公証人○○作成の○○○○年○○号の公正証書遺言を全部撤回する。 |
自筆証書遺言の場合、自筆で書いた遺言書をまた自筆で書くというのもばからしいので、本人の手で破り捨てて破棄すれば取り消したことになります。
それよりも、先に公正証書遺言で作った場合、公証役場で保管されているので破棄しても遺言書の効力が発揮されてしまいます。
ですので、しっかり、公正証書遺言が特定できるように、年月日や公証人名前を書くようにしましょう。
内容を一部変更したい場合の方法を紹介
遺言者の中には、一部だけを変更したいと考える人もいると思います。
「○○○○へ土地を渡すにしたけど・・・やっぱり土地と建物の両方を渡したい」
数年後に考えも変わり、遺言書の内容を少しだけ変えたいと思うかもしれませんよね。
ですので、その変更方法を紹介します
前の遺言書 | 一部変更 |
自筆証書遺言 | 新しい遺言書に書き換える |
公正証書遺言 | ○○○○年○月○日○○法務局所属公証人○○作成の○○○○年○○号の公正証書遺言の第〇〇条~を撤回し、○○(加えたい内容)にする。 |
自筆証書遺言の修正には「訂正箇所を二重線、○○字削除、○○字加入、押印」など決まった方法があります。しかし、手慣れていないと修正が難しく無効になってしまうおそれもあるのです。
自筆証書遺言を修正したい場合、何度でも手軽に作成できるメリットを利用し新しい遺言書を作成するのがおすすめです。
公正証書遺言を修正した場合は、民法1023条で「前後の遺言書が抵触する部分については撤回(取り消し)したものとみなす」と書いてあるので、自筆証書遺言で訂正箇所だけを指定した方法で新しい遺言書すれば大丈夫です。
上記の表には、記載せませんでしたが、「前の公正証書遺言を後の公正証書遺言」変更したい場合、再度、公正証書遺言を作成しなければいけないので、同じ手間と費用が掛かるので注意が必要です。
公正証書遺言を取り消すには、再度、公正証書遺言で作成するのが一番

自筆証書遺を取り消すには、「全撤回の文言」を書いた自筆証書遺言を新たに作成するか破棄すればいいと言いました。
公正証書遺言の場合も同じように「全撤回の文言」を書いた自筆証書遺を作成すれば、取り消したことになります。
しかし、自筆証書遺での取り消しは、相続が起きたときに相続人から疑われる可能性や紛失の可能性もあり問題が起きる原因にもなります。
ですので、先に公正証書遺言を作っている場合には、新たに取り消し旨を書いた公正証書遺言を作成するのが望ましいでしょう。
この場合、遺言内容は「○○○○年○月○日○○法務局所属公証人○○作成の〇〇○○年○○号の公正証書遺言を全部撤回する。」となります。
遺言者の印鑑証明書と証人2人と手数料13,000円が必要です。※茨城県水戸公証役場の場合
公正証書遺言を取り消した後、もっと前の遺言書を発見してしまった・・・すべて無効
たまにこのような相談を受けることがあります。
「公正証書遺言を取り消したあとに、さらに古い遺言書を発見したのですが、この遺言書は有効なのでしょうか」
答えから言ってしまうと「そのような遺言書であって効力はありません」
なぜなら、第1023条で「前の遺言書は、後の遺言書で撤回したものとみなす」となっているからです。
第1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
引用元:wikibooks
公正証書遺言を取り消した時点で、取り消す旨の遺言書を作成していると思われますので、それ以前に作成された遺言書はすべて取り消されたことになるでしょう。
新しい遺言書で取り消しは危険!しっかり明示して紛争回避
以前の遺言書を取り消す場合、新たな遺言書でしっかりと明示しましょう。
なぜなら、後々、複数の遺言書を発見した相続人たちでもめ事の原因になるからです。
複数の遺言書が発見された場合、法律上では、前の遺言書より後の遺言書を優先するとなっていますよね。これは、この記事でも何度も言っていることです。
遺言作成者の中には、そのことを知って以前の遺言書を破棄せずに新しい遺言書を残す人もいるかもしれません。
法律で決まっているから大丈夫でしょう。なんて安易な気持ちだと・・・複数の遺言書を見た家族は困ってしまうばかり、有利な内容の遺言を正当化しようと考えもしない行動(破棄、改ざんなど)に出てしまい紛争になる可能性だってありますよ。
ですので、争いを起きにくくするため以前の遺言書を取り消したいと思ったら、破棄するか「取り消す」旨を宣言した遺言書を作成するべきです。
取り消しは手間も費用も掛かる。遺言書は未来のことも考えて作る
これで遺言書の取り消しについて以上です。
いかがでしたでしょうか。
今回の解説をしっかり実行すれば、遺言書の取り消しや内容の変更ができるでしょう。
しかし、そのようなことをするには、手間と費用など無駄な労力が掛かってしまうのも分かったと思います。
ですので、遺言書を作ろうと思ったら、一度立ち止まりじっくり考えてから作ることをお勧めします。
以前、当事務所にご相談に来られたお客さまでも、話を伺ったところ・・・遺言書を作ることで家族との関係がさらに悪化してしまうと、当事務所は判断し作成を勧めなかったことがありました。
このように、何でもかんでも遺言書を作れば紛争予防になると思ってはいけません。専門家に相談することで、どうすれば一番いいのかアドバイスが貰えるので検討してみましょう。
今回は以上です。
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