相続が終わって、一段落した後に被相続人の遺物を整理していたら「新たな預貯金」が出てきたなどは良くある話です。
以前、当事務所でも相続手続き完了後、 数百万円の預貯金が見つかり相談に来られたお客様もいらっしゃいました。
一度終わった相続手続き(遺産分割協議)はやり直しができるのか分からないですよね。
結論からお伝えてしますと相続人同士の「合意」あればやり直しも可能です。
しかし、遺産分割協議をやり直すのは、税金が掛かってしまうなどのデメリットもあるの注意が必要です。
それでは、今回は「遺産分割のやり直し」ついて詳しく紹介します。
相続のやり直しは「原則不可」ただし、相続人全員の合意などの例外があれば可能
冒頭で遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意があればできるとお伝えしましたが、手続きが終わった後、遺産分割をやり直したいと思っても原則やり直せません。
なぜかと言いますと、遺産分割の協議に基づく合意は、相続人間での契約になり例外がなければいけないからです。
例えば、民法96条もそうです。
第96条
詐欺や脅迫など、遺産分割協議に問題があればやり直しも可能です。
「相続人の全員が既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではない」引用元:最高裁平成2年9月27日判決
また、問題行為がなくても裁判所の判例では、相続人全員の合意があれば、遺産分協議をすることは可能であるとなっています。
しかし、合意あればと言っても簡単にやり直すのは難しいです。
遺産分割協議のやり直しは、相続人の誰かが損をする可能性があり合意が得れるのが難しいからです。
なので、遺産分割協議をやり直すは難しいと思った方がいいでしょう。
遺産分割協議のやり直しが必要な例を2つ紹介

ここでは、遺産分割協議のやり直しが必要な例を2つ紹介します
遺産分割協議後、不明の財産が出てきた場合
初めに遺産分割協議後、不明の財産が出てきた場合です。
私のお客様で起きた例です。
相続手続き完了後、数百万円の預貯金が見つかり再度、遺産分割協議書を作成しました。
当時、手続きを進める前に被相続人(亡くなった人)の財産を調べてから遺産分割協議をするようにお伝えてしておいたのですが、一部の相続人が相続財産を隠して手続きを完了させてしまったのです。
遺産分割協議のやり直しはデメリットしかありません。
相続財産を隠したことにより、相続人間は仲が悪くなってしまい、さらに専門家費用も掛かることになります。
このように、新たな財産が発覚してしまうと、もう一度、遺産分割協議をすることになり手間と費用が掛かってしまいます。
手続きが止まっている一部の財産を遺産分割協議する場合
もう1つは、一部の財産だけ残し遺産分割協議を完了し、後日残った財産を遺産分割協議する場合です。
相続財産は、不動産や預貯金など様々な種類があります。
そして、不動産は、現金とは違って分割することが中々できません(共有や現金化など例外あり)
そのような不動産を誰が引き継ぐのかまとまらず遺産分割協議しない場合があります。
ですので、話し合いで決まらなかった財産(不動産)などは、後日遺産分割協議するケースもあります。
調停また審判による遺産分割協議が完了したらやり直し不可
相続人の合意があっても、遺産分割協議がやり直せない場合があるので注意が必要です。
それは、裁判所の調停や審判を受けて遺産分割協議が決まったときです。
裁判所を通して行う遺産分割協議は、相続人同士で話し合いがまとまらず紛争になっているからです。
権威力がある第三者機関(裁判所)の力を借りて、決まった内容を再度やり直すことは、よほどの事情や問題がない限り、やり直すことはできません。
遺産分割協議をやり直す2つのデメリットを紹介
それでは、遺産分割協議をやり直すデメリットを2つ紹介します。
贈与税や不動産所得税や登録免許税が掛かる
1つ目は、「贈与税」や「不動産所得税」や「登録免許税」の税金が掛かってしまいます。
遺産分割協議をやり直すと、税務署側では相続手続きとみなさず、贈与とみなし贈与税や取得税を適用します。
相続の場合、基礎控除(3000万円)などのメリットがありましたが、贈与の場合、暦年控除(110万円)になるので、贈与税を多く支払ってしまうことになります。
このように、遺産分割協議をやり直すと様々な税金を負担することになりますので注意が必要です。
不動産の名義変更に専門家の費用が掛かる
もう1つは財産に不動産があった場合、名義変更手続き必要になってきます。
名義変更手続きを専門家に頼むとなったときは、その費用が掛かってきます。そして、名義変更に掛かる登録免許税などの税金まで掛かることになります。
不動産がある遺産分割協議をやり直すことは、無駄な手間や費用が掛かってしまうことになるので注意が必要です。
遺産分割協議のやり直しは、時効に注意する
次に遺産分割協議のやり直しの時効についてです。時効が過ぎてしまうと、やり直しができませんので注意が必要です。
以下で、民法884条を挙げておきます。
第884条
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする引用元:wikibooks
このように、「侵害を知ったときから5年」と「相続開始の時から20年」経過したときは遺産分割協議のやり直しができなくなってしまいます。
「相続手続き完了後、数百万円の預貯金が見つかった」などの場合は侵害には当たりませんが、そのままほっておいてしまうと時効により手続きができなくなってしまいます。
なので、発覚した時点で速やかに相続人たちで遺産分割協議をしましょう。
まとめ
読んでいかがだったでしょうか。
一度決まってしまった遺産分割協議を再度やり直すことも可能です。
しかし、相続人全員の合意など遺産分割協議をやり直すには難しい場合が多いです。
遺産分割協議をやり直すと、専門家の費用や相続人同士の話し合いが必要になり費用と手間だけが無駄になってしまいます。
そればかりか、最悪相続人同士の揉める原因になり兼ねないので注意がしなければいけません。
遺産分割協議に不安がある場合、信頼できる専門家に頼んで相続手続きを進めるようにしましょう。
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