前回の続きで相続手続きの実務の「中編」です。前編を読んでいない方は上記の記事を読んでから「中編」を読んでくださいね。
この記事を読んでいただければ、相続の業務が安心して行えるようになります。
なぜなら、行政書士のイシマサが、新人行政書士さんに向けて書いた相続手続きの実務の説明をしているからです。
それでは、相続手続きの実務「中編」です。
この記事の学び
- 行政書士の相続手続きの実務が分かる
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- これから開業する新人先生…
- 相続手続きをメイン業務したい先生…
- 相続手続きが分からない先生…
このような先生に向けて相続実務マニュアルを作りました。
相続専門行政書士のいしが今まで経験してきた知識をありったけ詰め込みました!!
これ1つで相続手続きが安心して進められる!ぜひ手に取ってください。
管理人
- 専業行政書士(平成28年登録)
- 予備校(通信講座)&独学。4回目受験で合格
- 相続専門として年間相談件数は100件以上
- 保有資格:行政書士、FP2級、日商簿記2級
- 副業ブログで収益(最高6万円/月)
- twitterフォロワー数2万超え
全体の相続手続きの流れ
再度、相続手続きの流れの全体像を載せておきます。進む前にもう一度確認してから進むようにしましょう。
以下で相続手続きの流れを記しておきます。
ⅰ.お客さんから相談の連絡
ⅱ.受注に直結する面談対応
ⅲ.明確な見積書でお客さんを安心させる←ここまで前編
ⅳ.お客さんと業務委託契約を結ぶ
ⅴ.相続に必要な書類集め
ⅵ.相続手続きに必要な契約書を作成←ここまで中編
ⅶ.相続人たち同士で遺産分割の話及び印鑑押印
ⅷ.他の専門家及び銀行手続きのため書類送付
ⅸ.納品物と請求書
ⅳ.お客さんと業務委託契約を結ぶ
それでは、お客さんとの契約関連について解説します。
開業して業務を受注できたら、お客さんと業務委託契約をしなければいけません。
そうしなければ、いつから業務を始めていいのか判断できないからです。また、お互いに契約を交わすことで、権利義務が生じ安心が得られます。
専門家のあなたは相続手続きを「完遂する義務」が生じ、お客さんは委託料として「報酬を支払う義務」が生じます。そうなれば、「手続きがされない」や「報酬が支払われない」などの問題が起きにくくなるのです。
専門家の中には、契約を交わさないで手続きを進める人もいます。しかし、業務を完了後、お客さんが報酬を払ってくれなかったらどうでしょうか。
「怒ってお客さんに言う」か「泣き寝入りする」のどちらかになってしまうかもしれません。そうなってしまえば、受託したあなたの心はいい気持ちはしないはずです。
そうならない為も、お客さんと業務委託契約を交わしてから業務を開始しましょう。
業務委託契約を結んだら着手金をもらう
無事にお客さんと業務委託契約を交わしたならば、業務を始める前に着手金を頂きましょう。
着手金を貰わなくても業務を進めるのは可能ですが、手続きが完了するまで、あなた自身が費用の立て替えをしなければいけません。
例えば、「戸籍・登記簿謄本等の公的書類の取得」や「司法所書士の登記手続き」などには、何十万円も掛かったりします。
開業して間もないときは満足な収入もないので、いろいろと金銭的にも大変だと思います。そんな状態で、 何十万の金額を立て替えるのは、非常にきついですよね。
なので、少しでも金銭的に余裕を持つためにお客さんから着手金を貰うのは重要です。
業務委託契約を結ぶと同時にお客さんに伝える2つのこと
業務委託契約を無事に交わし終えたら、手続き進めるためにお客さんにも手伝ってもらうことが2つあります。
その2つをお客さんに伝えておき「ⅵ.相続手続きに必要な契約書を作成」と「ⅶ.相続人たち同士で遺産分割の話及び印鑑押印」までに準備しておいてもらいましょう。
その2つは以下になります。
相続人たちで分割の方法を決めておくように伝える
契約が済んだら「ⅵ.相続手続きに必要な契約書を作成」までに、「被相続人の財産を相続人同士でどのように分けるのか」を伝えておきましょう。
なぜかと言うと、相続手続きを進めるために必要な遺産分割協議書を作成するからです。
例えば、被相続人の不動産名義を相続人へ、変更するために遺産分割協議書が必要になるのです。
この遺産分割協議書を作るときまでに、相続人たちで遺産の分け方を決めてもらうようにしましょう。
相続人たちの印鑑証明書の取得を伝える
業務委託契約が済んだら、「ⅶ.相続人たち同士で遺産分割の話及び印鑑押印」までにお客さんに各相続人の印鑑証明書の取得してほしいことを伝えておきましょう。
なぜなら、相続手続きを進めるために必要な書類になり、本人しか取得できないからです。
なので、印鑑証明書だけは各相続人に取ってもらうようにしましょう。
おまけ:固定資産税評価証明書取得のための委任状
相続手続きの中に不動産の名義変更手続きがある場合、不動産がある住所地の市役所の委任状を用意しお客さんに署名押印をしてもらいましょう。
なぜ委任状が必要かといいますと、固定資産税評価証明書を取得します。この固定資産税評価証明書は、不動産の名義変更に必要になります。
たとえば、建物の名義変更がある場合、固定資産税評価証明書をもとに建物評価額を確認して、登録免許税を確定するのです。
固定資産税評価証明書は、行政書士の職務権限では取得できない書類になるので、必ず代表相続人(お客さん)の署名押印がある委任状が必要になります。なので、契約と同時に市役所の委任状も用意して書いてもらいましょう。
ⅴ.相続手続きに必要な書類集め
契約も済み着手金の支払いも確認ができたら、さっそく相続手続きに必要な書類を集めていきます。
「各行政庁や各手続きの施設」を訪問します。たとえば、相続人が住んでいる市役所や被相続人の預貯金解約のために銀行を回っていきます。
以下で、相続手続きに必要な取得書類を挙げておきます。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 被相続人の除籍謄本
- 被相続人の戸籍の附票
- 相続人の戸籍の附票
- 各相続人の戸籍謄本(現在)
以下の書類は被相続人の財産があった場合に必要になります。
- 不動産がある住所地の固定資産税評価証明書
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 銀行解約手続きの書類
- 株式の変更手続きの書類
- 共済金解約手続きの書類
- 自動車の名義変更手続きの書類
赤文字の書類は、相続手続きに絶対必要な書類です。
それ以外の「株式の変更手続き」や「共済金解約手続き」などの各手続きによって、書類が必要になります。 そのため、受注した手続きによって追加書類が必要になる場合もあります。
例えば、私が受注したことある共済金の解約手続きならば指定の委任状が必要になりました。
なので、受注した相続手続きに沿って必要な書類を集めていきましょう。
本籍地や住所地が遠方のとき、戸籍・住民票の取得方法
被相続人・相続人の「本籍地」や「住所地」が遠方になり、自分の足で取りに行けない場合は郵送で取得しましょう。
また、戸籍の取得先は、本籍地がある市役所になります。くれぐれも住民登録している住所地が本籍地とは限りませんので注意が必要ですよ。
それでは、ここで郵送での戸籍や住民票の取得の方法を解説します。ちなみに、戸籍も住民票も取得方法は一緒です。
まず揃える物を以下で挙げます。
- 職務上請求書
- A4郵送用封筒と返信用封筒
- 郵送用返信用切手
- 定額小為替証書
- 書類送付状
- クリアファイル
郵送までの一連の流れ
1:お客さんの個人情報をもとに、被相続人・相続人の職務上請求書を記入する
2:戸籍や住民票の費用を払うために最寄り郵便局で定額小為替証書を発行する
3:各市役所のHPで郵送用封筒と返信用封筒に宛名を記入する
4:自作した送り状(ワード)を作成
5:1.2.3(返信用封筒と切手のみ).4をクリアファイルに入れ、クリアファイルを郵送用封筒入れてポストに投函する
・職務請求書は、行政書士に登録し「コンプライアンス研修」を受ければ使用が可能になり、その時に記入方法も教えてくれます。
・郵送用の封筒の宛名は、市役所によって送る部署が指定されているので注意が必要です。
・定額小為替証書は、 住民票や戸籍に掛かる費用分より少し多めに入れておくといいですよ。戸籍なら約5000円、住民票のみならぴったりの金額で大丈夫です。
・返信用切手は料金が足らなくても大丈夫です。料金が足らないときは、後日払えば問題ありません。
・ポストに投函後、返信用封筒が届くまでに1~2週間ぐらいは掛かると思ってくださいね。
ⅵ.相続手続きに必要な契約書を作成
相続手続きに必要な書類が揃ったら、行政書士として契約書などを作成します。作成するときは、誤字脱字に気を付けて作成しなければいけません。
なぜなら、誤字脱字のままお客さんに提出してしまうと再度作り直すハメになってしまうばかりか、業務が完了後なら再度手続きすることになり、お客さんに迷惑をかけてしまうからです。
例えば、「遺産分割協議書を作成し、無事に相続人同士で押印も済ませた後に、内容の書き方にミスが発覚してしまい協議書の効力が無効になってしまった」となれば、再度相続人たちに集まってもらい、押印を頼まなければいけなくなってしまうのです。
このようになれば、お客さんからクレームが発生することになるので、書類の作成には細心の注意で取り掛かりましょう。
相続人同士が締結する遺産分割協議書
お客さんに契約時に伝えておいた遺産分割の方法を聞き取りましょう。そして、聞き取った内容をもとに遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書に書かれている内容は相続人同士で締結すれば法律上の効力が及びます。なぜなら、遺産分割協議書は相続人同士の契約書になるからです
以下のような遺産分割協議書すれば、相続人は書かれている内容が有効になるのです。
このように、相続人同士で決めた遺産の分けた内容を契約書として残すことで、第三者への証拠となり不動産登記手続きなどその他手続きに使える書類になります。
相続人たちが一目でわかる相続関係説明図
次に不動産手続きなどに必要となる相続関係説明図も一緒に作っておきましょう。
相続関係説明図を作成しておくと、各手続きで便利です。
たとえば、「銀行解約のため、担当者に(相続人の人数)を理解してもらう」または「お客さんに他の相続人を把握してもらう」ことに役に立つからです。
なので、相続関係説明図も作成しておき、いろいろな手続きに役に立てましょう。
銀行等の解約手続きが数件あるときは、法務局で「法定相続情報証明制度」を使ったほうがいいですよ。
銀行解約手続きには、集めた書類を銀行へ送らなければいけません。手続きが数件ある場合、前の手続き終わるまで書類が戻ってこないので、その後の手続きが滞ってしまいます。
法定相続情報証明制度を利用すれば、一部の書類が簡略化できるので数件の解約手続き同時進行で進めていけるようになります。
なので、非常に便利ですね。
まとめ
以上が「中編」での相続手続きの実務になります。
前編とは違いより実務に近い内容だったのではないでしょうか。
行政書士になったら一番知りたい「業務委任契約から始まり、書類の収集・遺産分割協議書の作成」だったと思います。
なぜなら、ほとんどの方が業務未経験で開業する先生がほとんどだからです。「遺産分割協議書作成方法」や「業務委託契約書はどうするのか」や「着手金はもらうべきなのか」など知りたい情報が多いはずです。
実際、私も開業当初は同じように実務で悩みました。なので、同じような境遇の人たちに還元したいと思っていますので、役に立ててくださいね。
- 人に役立つ仕事がしたい!
- 脱サラして独立開業したい!
- 手に職を付けたい!
- 会社の給料に不安を感じた!
- フリーターから脱却したい!
行政書士を目指すきっかけは人それぞれだと思います。
それでも行政書士になりたいと目標や夢を持ったなら下記の記事を読んでください。
「行政書士を目指し食べていけるまでになった10年間の経験談」をまとめました。
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