近年、相続人たちによる相続時の争いが増えています。テレビなど多くのメディアで、紹介されることもしばしば。
そして、番組の後半に紛争の解決策として遺言書をおすすめしていますよね。
例えば、事前に遺言書を作っておくことで、その紛争予防ができるので安心です。そして、遺言書は、手軽に作れるからぜひあなたも作ってみてはいかがでしょうか。などと言われます。
しかし、そのような手軽に作成できる遺言書は自筆証書遺言といい、1つ間違ってしまうと、後々も揉める原因にもなる諸刃の剣なのです。
形式ミスによる無効の遺言書により、その内容を見た相続人同士で争ってしまったなどはよくある話です。
そんな自筆証書遺言は、簡単に作成できる反面、さまざまなことに気を付けなければいけません。
ですので、今回そんな自筆証書遺言のメリットとデメリットを詳しく紹介します。これを読んで、少しでも自筆証書遺言に役立ててください。
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自筆証書遺言を作る人は、80%以上が「自分の考えるとおりに財産を渡したい」
そんな自筆証書遺言ですが、書く目的は「自分の考えるとおりに財産を分配したい」と思っている人が80%以上です。以下で自筆証書遺言のニーズ調査を行ったデータがあるので紹介しておきます。
遺言者が「自分の意思で財産を分配したい」というのは、家族たちのことを想う気持ちの表れではないでしょうか。
遺言書がなければ、残された家族(相続人)たちで、話し合って遺産分割をしなければいけなくなります。
何事もなくスムーズに話し合いがまとまればいいですが、順調に進むとは限りませんよね。
例えば、相続人が話し合いに協力しない、財産の競合で言い争いになるなど、まとまる話もまとまらず、何年もいがみ合いが続いてしまうかも知れません。
そうなってほしくない遺言者は、自分の意思で財産を分配しておくことで、家族も分かってくれるだろうと思い遺言を残そうと考えるのです。
手軽に作成できる自筆証書遺言!3つのメリットを紹介
紛争予防のため、遺言を残そうと考えた遺言者は、書籍やインターネットを使って遺言書について調べると思います。
そして、まず初めに手軽に作れる自筆証書遺言を作ってみようかと考えるでしょう。
自筆証書遺言は、場所を選ばずにすぐに作成できるメリットあります。
ですが、たくさんのデメリットもあり1つ間違ってしまうと争いの原因になるので注意が必要です。
なので、自筆証書遺言を作る前に、メリットデメリットをよく知っておくことが重要です。
それでは、以下でまとめた表を紹介します。
- 遺言書の存在と、遺言内容を秘密にできる
- 費用が掛からない
- いつでもどこでも作成できる
メリット1:遺言書の存在と内容を秘密にできる
メリットの1つ目は、遺言書の存在や内容を秘密にできることです。
自筆証書遺言は、誰の関与も受けず作成できるので、遺言者自身が誰にも喋らなければ知られることはありません。
ですので、遺言書の存在や内容を秘密にしたい場合には自筆証書遺言はおすすめです。
メリット2:作成費用が掛からない
2つ目は、作成費用がほとんど掛からないことです。
紙、ペン、印鑑、封筒があれば、作成できます。
このような道具を購入したとしても、数百円で済みますよね。
紙は大学ノートでも構いませんし、書く物は鉛筆などの消せる物以外なら何でも構いません。
そんな自筆証書遺言は、「費用が安く済むから、遺言書としての効力に問題があるのでは」と思うかもしれませんが、遺言書の効力に影響はありません。
ですので、費用もかけずに、想いを載せた遺言書が作成できるでしょう。
メリット3:いつでもどこでも作成できる
最後は、自筆証書遺言は思い立った時に場所日時を気にせず作成できます。
紙、ペンなどがあれば誰の手も借りず自分一人ですぐにでも作成できます。
また、手軽に書けるので、遺言内容の変更などがあれば何度でも書き換えられるメリットがあります。
以上の3つがメリットになります。
争いの原因になる自筆証書遺言!8つのデメリットを紹介
それでは、次から自筆証書遺言のデメリットを紹介します。
デメリットは意外に多いです。手軽に作成できる反面さまざまなことに注意しなければ、後々問題が起きてしまう可能性もあるのです。
例えば、遺言書の内容に納得がいかない相続人よる関係の悪化など
自筆証書遺言のデメリットも把握しておくことが、紛争予防に繋がる遺言書作成が可能なるでしょう。
以下で、デメリットをまとめたのでご確認ください。
- 紛失や偽造、隠匿が起きる可能性がある
- 内容が不明確になる可能性がある
- すべて自書!ミスしないで作成するのは一苦労
- 自署・署名ができない場合は作成不可能
- 無効になる恐れがある
- 死後、発見されないことがある
- 複数残すと相続人同士で揉める原因になる
- 死後、発見されない場合もある
以上の8つがデメリットになります。
デメリット1:紛失や偽造、隠匿が起きる可能性がある
デメリットの1つ目は、紛失や偽造、隠匿などが起きる可能性があります。
自筆証書遺言は、秘密にしておける反面、保管場所に困ることがあるのです。
タンスなどに閉まっておいて、家族の誰かが、偶然にも遺言書を発見し中身を見てしまうかも知れません。
内容を読んだ家族は、自分の不利な内容だった場合、内緒で偽造や滅失また盗難をしてしまうかも。
せっかく作った遺言書なのに、そうなってしまったら最悪ですよね。
ですので、内容と保管場所には十分に注意しなければいけません。
デメリット2:内容が不明確になる可能性がある
次に内容が不明確になる恐れがあります。
自筆証書遺言は、誰にも関与されずに作成できるメリットがあります。
しかし、誰にもアドバイスを受けることなく書いてしまうので、内容があいまいになってしまう可能性があるのです。
例えば、土地は、子供たちに譲る・・・子供たちが複数人いたらどうでしょう。誰がどう引き継ぐのでしょうか。
土地を分割するのか。共同で保有するのか。どっちにしろ、困ってしまうのは子供たちです。
このように、好き勝手に書いてしまうと、内容が不明確になり残された家族が大変になってしまうので注意が必要です。
デメリット3:すべて自書!ミスしないで作成するのは一苦労
3つ目は、自分で書く遺言書は大変です。
近年、民法改正により、財産目録などをパソコンで作成できることになりましたが、遺言書本体は、すべて自書しなければいけません。
内容が多くなれば、書く量も増えます。ましてや、遺言書を書くことも初めての人がほとんどです。
誤字脱字など失敗しないよう書くのも、本当に大変で一苦労です。
自筆証書遺言は、このような手間もあります。
デメリット4:自署・署名ができない場合は作成不可能
自筆証書遺言は、すべて自書しなければとお伝えしました。代筆や音声などの遺言書は無効になってしまいます。
ですので、自書や署名ができない場合、自筆証書遺言を作成することはできません。
デメリット5:無効になる恐れがある
5つ目は、作った遺言書が無効になる恐れがあります。
日付、名前、内容、署名など自筆証書遺言は形式に沿って、書かなければ無効になってしまうことがあります。
例えば、2020年9月吉日…このような日付の書き方はダメです。
このような遺言書を残してしまうと、本人の意思で書かれた遺言なのか、疑われてしまうので注意しましょう。
デメリット6:複数残すと相続人同士で揉める原因になる
死後、遺言書が2通出てきたら、作成日が新しいものを優先します。
しかし、同じ日付で、違った内容の遺言書が発見されたどうでしょうか。自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、疑われる可能性が高いのも事実です。
実際、ある相続人が遺産を多くもらうため、遺言者に自分に有利になるように強引に遺言書を作らせ、後日、遺言者が新たに遺言書が作りました。
死後、2通の遺言書が発見され相続人同士で争ってしまったなどはよくある話です。
このように、遺言書を複数残すと、問題が起きる可能性があります。
デメリット7:死後、発見されない場合もある
7つ目は、遺言書が発見されない問題が発生します。
そもそも自筆証書遺言を書く人は、遺言書を書いたことすら秘密にしていることが多いです。
保管場所が誰も知らなかったりし、死後も発見されない問題たくさんあったので、現在、紛失改ざん予防も兼ねて、法務局で保管サービスを実施することになったぐらいです。
しかし、このようなサービスを利用せず、遺言書の存在を遺言者が胸の内を閉まっておいた場合、残された家族は遺言書を発見できない可能性もあるでしょう。
デメリット8:家庭裁判所の検認が必要になる
最後は、裁判所の検認が必要になることです。
自筆証書遺言は、必ずこの検認という手続きを行わなければなりません。
検認とは、相続人全員が裁判所に集まり、裁判所が遺言書の有無を認め開封する作業のことです。
この検認を経なければ、遺言内容を執行できないのです。
検認手続きには、一ヶ月ぐらい掛かりますので、すぐに内容の実現が不可能になってしまいます。
ですので、自筆証書遺言はめんどうな検認手続きがあります
まとめ
自筆証書遺言は、費用をかけず思い立ったらすぐに作成できます。それとは反対に、決まった方法で作成しないと、効力がないただの手紙になってしまいます。
例えば、すべて自筆しなければいけないのに、内容はパソコンで作成し名前だけ自書にした…
これでは、せっかく作ったのに遺言書として成り立たなくなってしまいます。
しかし、遺言者の死後、無効な遺言書を見た家族は、揉めてしまうかもしれません。
なぜなら、不利な内容を認めたくない相続人と効力はなくても遺言者の想いをくみ取ろうとする相続人同士で、争ってしまうからです。
紛争予防で自筆証書遺言を考えるなら、メリットデメリットを把握しじっくり検討した上で作成することをおすすめします。
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